おととし、福岡市の商業施設で当時15歳の少年が面識のない女性を刺殺したとされる事件の裁判です。15日検察が懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑しました。

おととし8月、福岡市の商業施設で包丁を盗んだうえ、客として来店していた当時21歳の女性を繰り返し刺して殺害した罪などに問われた15歳の少年。

通常、少年事件は家庭裁判所で非公開で裁かれますが、「刑事処分が相当」と福岡地裁で裁判員裁判にかけられ、その姿は仕切りで隠され名前も伏せられるなど異例な形で進められています。

これまでの公判で、少年が身体的・精神的・性的な虐待を受けていたこと、10歳ごろから精神病院や少年院などの施設を転々としていたことが明らかになっています。

裁判所の依頼で少年の鑑定をした専門家は「40年を超えるキャリアの中で信じがたい内容の虐待で、極めて不適切な養育環境」とまで言い切りました。

15日は被害者の母親が出廷し遺族としての意見を涙ながらに述べました。

「同じ目に遭わせてやりたい。でもしてはいけない。ずっと苦しみ続けています。許せません。どうか一生刑務所に入れてください。極刑をお願いします」

しかし、少年法で、被告が18歳に満たない場合「死刑をもつて処断すべきときは無期刑」と、成人より一段階下げた刑を科すことを定めていて、そもそも死刑を求刑することはできません。

15日午後、検察側は「事件から2年経っても反省に至っていない」と更生の可能性は乏しいとするとともに「全く落ち度のない21歳という若さの尊い命が奪われた、まさに取返しのつかない結果」と指摘しました。

その一方で、「人格形成の途中で未熟さがあることは否定できない」「他の裁判と比較すると無期懲役もやや重い」として懲役10年以上15年以下の不定期刑を求刑しました。

これに対し弁護側は「親ガチャにはずれた少年に対し、責任を問えるのでしょうか」「少年にとって施設での生活は苦痛を伴うものではなく懲らしめにはなりません」

刑罰ではなく、医療少年院での治療的療育を求めました。

最後に「言いたいことは」と裁判長に問われた少年は「特にないです」と言葉少なに答え、異例づくめの裁判は結審しました。

判決は25日に言い渡される予定です。

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