自衛隊内部の壮絶なパワハラについて、上官と部下の実際のやりとりを録音した音声を入手。部下に対して「骨を全部折る」と暴言を吐いた上官に、news23が直撃しました。上官の考えとは・・・。

〈ボイスレコーダーに録音された上官の声〉
「落とし前つけろって。つけるのか、つけんのか。どっちや!!」

これは男性自衛官が上官との電話を記録した音声だ。

〈上官の声〉
「死ねや。殺したる。鼻の骨も頭蓋骨も折るよ。なあ、全部折る。お前の骨。一本一本折ったろか?全部」

上官は40分間にわたり延々と暴言を続けていた。自衛隊の内部で起こったパワハラ事案。
TBSの情報提供サイト『TBSインサイダーズ』を通じて、上官からパワハラを受けたと告発したのは元自衛官の20代の男性。2018年から沖縄の航空自衛隊の基地に勤務していた。

パラハラ被害を受けた元自衛官の男性:
髪の毛をわしづかみにされて頭を振り回されたり、お前のアゴはなんだ、という理由でアゴを殴られたり。6、7回ほどですね。

基地という閉鎖的な空間で暴力は1年以上続いたという。決定的な出来事が起こったのは、2020年2月。那覇市内の居酒屋に同じ部隊の隊員が集まり、宴会が開かれた。男性は上官から離れた席に座っていたが、酒に酔った上官がいきなり後頭部を殴りつけてきたという。さらに、宴会の終了後、事件が起きた。

村瀬健介キャスター:
同僚との飲み会を終えて、こちらの路上に出てきたところで、上官に突然背後から首を絞められたということなんです。

男性が抵抗すると、上官は路上に倒れた。上官は「反抗的な態度だ」と首をつかんで激怒したという。

パラハラ被害を受けた元自衛官の男性:
「(上官が)お前がやろうとしたのは殺人未遂だぞ」と。「お前を刺し殺して切り刻んでぶち殺してやる」と。

この日以降、男性は“殺人鬼”と呼ばれるようになった。部隊内で孤立し、他の上官からも嫌がらせを受けるようになったという。

当時、男性の同僚だった現役自衛官が、私達の取材に応じた。

男性の同僚だった現役自衛官:
(上官が)彼の手首を締め上げて、他の隊員が止めているところを見ました。「少しぐらいどついても問題がない」と。ただ単に憂さ晴らし、いじって遊べるそういう存在。彼をそういう風に見なしていたんだと思います。これは全て“かわいがり”。昭和の自衛官の悪弊が出ているんじゃないかというような感じがします。

部隊内で孤立した男性は、自殺を考えるほど追い詰められたという。

パラハラ被害を受けた元自衛官の男性:
自殺をしようか、もう屋上から飛び降りて死のうか・・・。精神安定剤を買った時期もありました。上司を殺して自分も自殺しようかと思ったことも何十回もありました。(自分の)家族が悲しむことを考えると踏みとどまりました。清く正しく国を守る人間が働いていると思っていました。人生を無駄にしたなと。

〈ボイスレコーダーの上官の声〉
「自分から依願退職して辞めるのか。それとも俺に殺されて死ぬのか。それは好きにせえ」

上官から繰り返し暴行や暴言を受けていた男性は、今年3月、退職した。

問題の上官はどう考えているのか。上官の自宅を訪ねると迷彩服姿の上官が出てきた。

村瀬健介キャスター:
すいません。○○さんでいらっしゃいますか?あの、私、TBSの報道局の村瀬と申しますけれども、後輩でいらっしゃった△△さんのことで取材に参りました。なぜ突然首を絞めるようなことをされたのか?

上官:いや、してません。

村瀬キャスター:「殺すよ」とか。

上官:いえいえ、してませんから。

村瀬キャスター:「自衛隊を辞めろ」とか。

上官:いえいえ。

村瀬キャスター:暴言も吐いてらっしゃいますけれども。

上官:いえいえ、してませんよ。

村瀬キャスター:被害者の男性に言いたいことはないですか?

上官:はい。ないです。

村瀬キャスター:反省や後悔の念はないわけですか?

上官:何もないですね。

村瀬キャスター:その後退職されたんですけども。

上官はバイクに乗り、基地に出勤していった。

自衛隊のパワハラは深刻な問題だ。男性が追い詰められていた2020年3月、防衛省はパワハラの処分を厳格化した。

〈河野太郎防衛相(当時)会見〉
「基本的にいじめパワハラは根絶をしなければいけないという大前提の中で、若い人に安心して入隊をしてもらうことは大事だと思っております」

実は男性もパワハラ被害を解決しようと、別の上官に訴えた。その時の音声が残っていた。

〈相談を受けた上官(ボイスレコーダー)〉
「『ストレスのない職場』とか『環境作り』とかって、そんなもんお前、理想じみたことをぐたぐたぬかす奴は大嫌いなんだよ。このまま変わらないんだったら、辞めろ。別にこの声を録音しても何してもいいよ。この声を持ってパワハラと通報してくれてもいいよ。生半可な気持ちでこんなところで仕事してないから」

上官は相談に乗るどころか、被害者本人に退職を迫った。さらに男性は「反抗的な態度は取りません」という文書へのサインまで迫られたという。

パラハラ被害を受けた元自衛官の男性:
ふざけるな。許せない。もう本当にだまされた。おとしいれられたような気持ちでした。

なぜ組織として問題に向き合わなかったのか。パワハラ問題に詳しい弁護士は、自衛隊に対する外部のチェック機能は、海外の軍隊と比べ、明らかに低いと指摘する。

自衛隊パワハラ問題に詳しい 佐藤博文弁護士:
戦前の日本軍を引き継いだ形で自衛隊員の教育がされてきたという経緯があるんですよね。言うことを聞かなかったらぶん殴るとか、そんなの当たり前というような状況だった。ドイツなどヨーロッパでは『軍事オンブズマン』というのがあって、軍隊の誤った命令や兵士への処遇については第三者がチェックをして直させる仕組みがあるんですが、日本の自衛隊には(チェックする組織が)ないんです。

防衛省は今回の件について、私達の取材に対し「個別の事案についてお答えは差し控えます」とコメントしている。(16日23:58)

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