長引く新型コロナの影響で、経済的困窮から生理用品を買えない「生理の貧困」が、今、浮き彫りになっています。国や自治体も支援に乗り出しました。きっかけとなった勇気ある提案をしたのは、愛知県の小学生でした。

 「どこのトイレにもトイレットペーパーは常備されているのに、どうして生理用品はないの?」

 この問いへの答えが、様々な場所で聞こえてくるようになりました。

 6月に入って、国も本格的に動き始めました。

 「生理の貧困にある女性や女子たちへの寄り添った相談支援の推進」「今まさに取り組むべき施策だ」(加藤勝信官房長官)

 新型コロナの感染拡大で顕在化した「生理の貧困」の対策に向けて、具体的な調査を行うことが新たに決まりました。

 「生理用品を学校の個室に常備していただければ、お金もかからないし、こまめに交換できて心も体も健康になると思います」

 「生理の貧困」を知った、当時小学6年生の女子児童の提案です。

 今年3月、愛知県東郷町の子どもが、自分たちが住む街づくりについて発表する「子ども議会」での出来事でした。

常備することで、心身の健康を守る

 長引くコロナの影響で、アルバイト収入が減ったり解雇されたりと、若い世代を中心に生活が苦しくなる人が増えています。

 食費を捻出するため、ナプキンなどの生理用品を交換せずに使い続けることで、衛生上の問題だけでなく、心身の健康悪化も懸念されています。

 生きるために必要なものなのに、困っていても打ち明けられず隠されてきました。

トイレの個室で自由に手に取れるように

 女子児童の提案からわずか1カ月半。大人たちがその声に応えました。

 提案を知った東郷町の経済団体が、生理用品の購入費50万円を寄付したのです。この日は中学校の保健室に、段ボール2箱分の生理用品が届きました。

Q 何の作業をしている
「各校舎の女子トイレに置いて生徒が使えるようにと思っている」(東郷中学校・飯島恵子先生)

 保健室に受け取りにいくのではなく、トイレの個室で自由に手に取れるようにしました。

 「本当に困っている子、声を上げられない子がいると思うので、そういう子にとってはとてもありがたいと思う」(東郷中学校・飯島恵子先生)

 東郷町では、町内全ての公立小学校と中学校のトイレに生理用品が設置されました。しかし、寄付金頼みでは長く続けられません。

「あたりまえ」のものとして常備する

 そこで東郷町は新たな一歩を踏み出しました。

 「トイレットペーパーは常備備品として設置していますが、生理用品についても同様に常備備品として設置していくということで実施して参ります」(東郷町・井俣憲治町長)

 「あたりまえ」のものとして、予算に組み込むことを決めました。今後はふるさと納税で集まったお金の用途としても加えていく方針です。

 「経済的な不安を取り除く大切さを考えた時に小さな1歩かもしれないが大きく広がっていくとうれしい」(東郷町・井俣憲治町長)

 内閣府によりますと、愛知県で生理用品を無料で配布するなどの取り組みをしている自治体の数は、埼玉、東京に次いで全国3番目に多くなっています。

一宮市での支援 災害の備えの中にも「あたりまえ」に

 そのうちの一つが、一宮市です。地震や水害などの災害に備えた倉庫を見せてもらうと、備蓄品の中に、「あたりまえ」のように生理用品もありました。

 「生理用品に困っている方もいらっしゃると聞いたので協力できないかと始めた。」(危機管理課・堀尚志課長)

 一宮市では、災害備蓄用に購入した生理用品を更新する時期に合わせて、5月から無料で配布する取り組みを始めました。

 職員に言いづらい場合でも、窓口で備え付けのカードを提示すれば、名前や住所の記入をしなくても生理用品を受け取れます。もちろん、子どもでも受け取れます。

 こうした「支援の輪」は、市民レベルでも広がっています。

大府市での支援 届ける時は食料品と一緒に

 大府市で子育て支援サークルを運営する大橋房代さんです。
 
 これまで、生活に困っているひとり親家庭や、障がいがある人、DVシェルターなどに食料品を届けてきましたが、4月からは生理用品の扱いもはじめました。

 「昼用のもので我慢したり、昼用を2枚重ねて夜用のように使って凌いでいると言っていたので、夜用のナプキンがあるといいねと話していた。すごく喜ばれると思います」(子育て支援サークル・大橋房代さん)
 「役に立てて本当に嬉しいです」(寄付した人)

 「困っているときに助けてもらえたらうれしいですもんね。お互い様という気持ち、困ったときは。」(寄付した人)

 妊娠中やシニアの方などから、生理用品が次々と寄せられています。届ける時は食料品と一緒。こうすることで、生活必需品として「あたりまえ」になり、受け取る際の抵抗感をなくしています。

 「生理用品を寄付してもらうことで月数百円のお金を食費に回せることで、経済的な負担だけでなく精神的な負担が軽くなるのでは。」「寄付があることで知らない人であっても応援してくれる人がいるということが生きる励みになって心強いという意見も頂いている」(子育て支援サークル・大橋房代さん)

「優しい世界」を愛知から

 「あなたは一人じゃない」

 支援のその先にある「安心」が、「生きる励み」になっています。

 「助かります。ありがとうございます」「テレビで「生理の貧困」をちょうど見た後、話をいただいた」「食品配布と一緒にいただけるのは助かる」(受け取りに来た人)

 「生理用品をあたりまえに」誰一人取り残さない「優しい世界」を愛知から。

 大橋さんは、支援や理解の「転換期」を迎えていることに、確かな手ごたえを感じています。

 「ひとり親家庭のお子さんは毎日お父さんお母さんすごく頑張っている姿を見ていて、自分のためだけにお金を使ってもらうのは、申し訳ないから言えないということもあると思う。そういう子たちの思いを、声に出せないSOSを汲んで生理用品という形で支えるのもあっていい」(子育て支援サークル・大橋房代さん)

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