安倍晋三元総理大臣が銃撃されて死亡した事件で、山上徹也容疑者(41)の母親が、親族の生命保険金や土地など合わせて1億円近くを宗教団体に献金したとみられることが分かりました。

■安倍元総理銃撃…90m先に弾痕

 13日早朝から、およそ50人を動員して、大規模な現場検証が行われました。

 安倍元総理の背後、数メートルの距離まで近付き、手製の銃を発砲したとみられる山上容疑者。13日の検証では、現場から90メートルも離れた立体駐車場の壁から、弾痕のような穴が見つかったのです。

 この駐車場は、発砲地点と安倍元総理が演説していた地点の延長線上にあります。

 警察によると、見つかった弾痕のような穴は3カ所。4メートルから8メートルの高い位置にあり、複数の穴に弾丸のような金属片がめり込んでいるのが確認されたということです。

■銃器評論家「本物並みの威力」

 90メートル先の壁から弾痕が見つかるほどの銃の威力について、銃器の専門家は、次のように話します。

 銃器評論家・津田哲也さん:「本物の散弾銃と、今回の一見粗悪な銃は、全然変わらない威力を持っていた。これは間違いないと思います。散弾銃ですから、弾が広がりますので、周囲にいらっしゃった方々を殺傷した可能性も十分にある」

■「耐えていた」母親“旧統一教会”へ

 手製の銃の威力からも感じられる、山上容疑者の強い殺意。山上容疑者は以前、家族と共に東大阪市に住んでいました。当時の家族の様子を知る人は、次のように話します。

 東大阪市時代の山上家を知る女性:「酒飲んで、口調がきつくなる。旦那さんが」「(Q.奥さんはその時どんな感じ?)耐えていた。耐えていた、ずっと。(旦那が)奥さんに、とにかく怒っていた」「(Q.週にどのくらい?)1週間に1回くらいかもしれない」

 その後、山上容疑者の父親が亡くなります。女手ひとつで、3人の子どもを育てることになった母親。山上容疑者が高校3年生の時に、母親が入会したとみられるのが、当時の統一教会でした。

■容疑者の母親「家も会社も売却」

 ANNは、山上容疑者の親族に話を聞くことができました。親族は、統一教会入会後の母親の変化について、こう話します。

 山上容疑者の親族:「顔つきは宗教に入って、良い意味でいうと険しさはとれた。悪い意味でいうとほうけた。生気がない感じがした」

 その後、信仰にのめり込んでいったという母親。献金にも、拍車が掛かっていったといいます。

 山上容疑者の親族:「母親は、祖父の会社で経理をしていた。祖父が亡くなって、母親が家も会社も売却した」

 山上容疑者も警察の取り調べに、こう供述しています。

 山上容疑者の供述:「20~30年前に、母親が統一教会に入会しました。その後、多額のお金を振り込んだ影響で破産。そのころから恨んでいた」

 捜査関係者への取材で、新たに山上容疑者の母親が、親族の生命保険金や土地など合わせて1億円近くを宗教団体に献金したとみられることが分かりました。母親は、2002年に自己破産しています。

■大学同級生に「素晴らしい宗教」

 統一教会入会後の母親の変化に気付いた人は、他にもいます。

 母親の大学時代の友人に、話を聞くことができました。その友人によると、大学卒業以来、数十年ぶりに母親と再会を果たした際に、そのあまりの変化に驚いたといいます。

 山上容疑者の母親を知る大学時代の友人:「家庭がとても大変で、特に夫との関係が苦しかったみたい。その時、夫はすでに亡くなっていた。その苦しみから救われたと、話をずっとしてましたね。宗教の力で。本当に心酔している感じでした。素晴らしい宗教だと」

 久しぶりの再会にもかかわらず、山上容疑者の母親は、最初から最後までずっと統一教会について話し続けていたといいます。

 山上容疑者の母親を知る大学時代の友人:「当時、(統一教会の)集団結婚とか献金問題とかすごかった。批判されていたと思う。やめたほうがいいよって、話は私がした」

 この時、友人は宗教から抜けるように諭しましたが、聞き入れてもらえなかったといいます。

 山上容疑者の母親を知る大学時代の友人:「心底、宗教に入っている感じでしたね。私も今思うと、もっと言ってあげたら良かったと思うが、(耳に)入らなかった」

■母親通った場所に…試し撃ちしようと

 去年の秋には、銃を完成させていたという山上容疑者。凶行に及ぶ前日の未明、奈良市内にある旧統一教会の関連施設に向けて、試し撃ちをしたとみられる銃声が、防犯カメラに残っていました。

 しかし、銃弾は関連施設ではなく、隣の別会社の建物の壁から見つかっています。

 間違われ銃撃された会社・従業員:「いい迷惑というかね。理不尽でしかない。(教会施設には)多い時で、毎日10人くらいは来ていると思うが。どういった活動をしているかは全然認識ない」

 教会関係者への取材で、山上容疑者が事件前日に試し撃ちしようとした旧統一教会の関連施設は、以前から容疑者の母親が通っていた場所だったことが分かりました。

■容疑者の親族「心張り裂けんばかり」

 当初、狙っていた宗教団体トップの殺害を断念し、恨みの矛先を安倍元総理に向けた山上容疑者。殺害に動いたのは、事件前日の岡山県での応援演説の時でした。

 山上容疑者の供述:「安倍元総理が会場に入る時か出る時を狙っていましたが、裏口からの入退場で周りにSPがいるので、結局その日は何もできませんでした」

 しかし、岡山からの帰り道で、山上容疑者はあることに気付いたといいます。

 山上容疑者の供述:「帰りの新幹線で、自民党のホームページで、安倍元総理が翌日、奈良県に来ることが分かりました。岡山で実行できなかったので、諦めかけていましたが、奈良に来るということなので、この日に安倍元総理を殺そうと思った」

 山上容疑者の親族は事件について、こう振り返ります。

 山上容疑者の親族:「本当に信じられない。なぜ、安倍さんなのか。縁のあるものとして、本当に申し訳なく思います。徹也くんが、そこまで追い込まれるだけの理由があったのだろうと思うと、心が張り裂けんばかり」

■安倍元総理「国葬」と…党内から声

 安倍元総理に関しては、政府と自民党が秋頃に大規模な葬儀を行う方向で検討していることが分かりました。

 近年は、総理経験者の葬儀は「内閣・自民党合同葬」とすることが慣例化していますが、自民党内などには安倍元総理については「国葬」とすることを求める意見が上がっています。

 ただ、正式な国葬を行うには、新たに法律が必要ともされ、実現は難しいとみられます。

 政府内には、場所を日本武道館とする案が浮上していて、安倍元総理と親しかったアメリカのトランプ前大統領の参列も想定しています。

(「グッド!モーニング」2022年7月14日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp

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