銃撃され死亡した安倍元首相。これまでの取材で見えた人物像や、外交などでの存在感を振り返ります。政界に大きな影響力を持ち、政府・自民党中枢との関係も複雑なものがありました。大きな存在を失ったことで、岸田政権はどんな影響を受けるのでしょうか。

■硬軟両面…安倍元首相の人物像

有働由美子キャスター
「小栗さんは、安倍元首相を取材した経験が何度もありますが、どんな存在の政治家でしたか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「非常に二面性のある人だった印象があります。例えば取材で、森友学園の問題などで『説明責任を果たしていないのではないか』と質問すると、非常に気色ばんで反論してきました。多くの言葉を費やして、一切こちらの言い分には耳を傾けない頑固さがありました」

「一方で、少しフランクな意見交換をする場では非常に明るく、場を盛り上げようとするような気遣いも見せてくれる、楽しい一面もありました。かたくなさと明るさという硬軟どちらを見るかで、印象も大きく変わるのではないかな…と思っていました」

■岸田政権を取り巻く構図とは

有働キャスター
「そんな安倍元首相が亡くなって、岸田政権全体にとってどんな影響があるのでしょうか?」

小栗委員
「今の岸田政権では岸田首相と(自民党の)麻生副総裁、茂木幹事長の3人がいわゆる主流派としていて、その周りに安倍元首相、菅前首相がいるという構図がありました。安倍元首相としては、何でもこの3人で決めていることに不満を持っていた、ということです」

「ただ岸田首相も、首相の先輩である安倍元首相の意向を軽んじることはできません。茂木幹事長としても、次の総裁選に出ることなども視野に、最大派閥・安倍派の支持も得たいため、安倍元首相への配慮も欠かさないといった微妙な関係にありました」

有働キャスター
「そうすると岸田首相はこの後、どういう立ち位置で、どういう動きをしていくことになるのでしょうか?」

小栗委員
「ある意味、安倍元首相のプレッシャーがなくなったとは言えますが、一方で例えば憲法改正や防衛費の増額というテーマでは、安倍元首相がある種、突出した意見を言うことで、強硬な保守派の支持をつなぎとめてくれる役割を果たしていました」

「それによって自民党内の意見の幅が広がり、岸田首相はある種フリーハンドを得ることもできていました。安倍元首相がいなくなった穴の大きさは、もしかすると岸田首相が一番痛感しているのではないかなと思います」

■トランプ氏と懇意…外交で存在感

有働キャスター
「安倍元首相は、外交でも存在感を示していました」

小栗委員
「何といっても、アメリカのトランプ前大統領との関係は特別なものがありました」

「日米関係に詳しい人たちの間では、この秋に行われるアメリカの中間選挙で共和党が力を得て、『トランプ大統領もう1度』という声が高まれば、日本で向き合えるのは安倍元首相しかいない、ということはよく言われていました」

「それだけに『3回目の首相も現実味があるかもしれない』『実は安倍元首相自身、それを狙っているのではないか』という声も、非常に根強く聞かれました」

有働キャスター
「そうした政治家の命を奪ったということで、本当にあってはならないことです」
(2022年7月8日放送「news zero」より)

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