安倍晋三元総理が8日、街頭演説のさなかに銃撃され、亡くなりました。
逮捕された元海上自衛隊の山上徹也容疑者(41)は、多くの有権者が集まるなか、犯行に及びました。
山上容疑者は「殺そうと思ってやった」と供述しているといいます。
海外はどう反応しているのでしょうか。
◆アメリカ・ワシントン支局の布施哲記者に聞きます。
アメリカ政府は公式の反応を出しています。ブリンゲン国務長官は日本政府に対する弔意のコメントを発表しています。そのなかで、ブリンゲン国務長官は「非常にショックを受けている。安倍総理はグローバルに偉大な政治家だった。日本だけではなく、世界にとって大きな損失になるだろう」としています。
安倍元総理と非常に緊密な関係を築いたことで知られる、トランプ前大統領は「世界にとって不幸なニュースだ。彼は日本という素晴らしい国を愛する政治家だった」とコメントを発表しています。
CNNテレビやワシントン・ポストは「総理大臣経験者が銃で“暗殺”された」という表現を使って伝えています。
各メディアは、日本での銃規制の厳しさ、銃犯罪の少なさに着目していて、今回の事件について「非常にまれな、銃が使われた犯行だった」と紹介しています。
ホワイトハウスではこの後、バイデン大統領に対するアメリカの情報機関による定例ブリーフィングが予定されています。
バイデン大統領はその場で、今回の事件についても報告を受けるものとみられます。
(Q.日米同盟の強化に努めてきた安倍総理が亡くなったことについて、どんな反応が出ていますか?)
各メディアの反応を見ていると、アメリカの専門家の口からは「自由で開かれたインド太平洋というコンセプトの立役者だった」という評価が出ています。
今回の事件を受けて、対中国で日本がどうなっていくのかという議論がされ始めています。
アメリカ政府は、安倍元総理を、日本が中国に戦略的に台頭していくという姿勢に転換させた立役者だとみています。
安倍元総理が亡くなった後、日本政府の海外政策、とりわけ中国とどう向き合っていくのか。この点に注目が集まり始めています。
◆中国・北京支局の千々岩森生記者に聞きます。
安倍元総理は、中国で最も有名な日本の政治家ということで、8日はメディアも世論も高い関心を示し続けています。
中国最大のSNS『ウェイボー』でも、事件の発生直後から今に至るまで、ずっと安倍元総理の事件のニュースがトップであり続けています。
それだけではなく、トップ10のうちの8~9個が安倍元総理のニュースと、非常に高い関心を示し続けています。
中国外務省は「安倍元総理は日中関係の改善・発展に貢献した」とコメントしています。中国から見れば、保守派で中国に対してタフな政治家という反面、在任中は常に日中関係の改善に尽力してきたという評価です。
安倍元総理は、総理大臣として初めて行った外遊が中国・北京でした。
当時2006年の10月、安倍政権発足直後で、前の小泉政権で非常に冷え込んだ“氷を溶かす旅”とも言われました。
安倍元総理が最初の訪問先に中国を選んで、当時の胡錦涛主席は「新たな日中関係の1ページを開いた」と評価しました。
その後、2012年の第2次安倍政権が発足した時も、その前の民主党政権では尖閣諸島問題などもあって関係は悪化していました。
しかし、10回ほどに及ぶ習近平主席との会談を経て、2019年12月の最後の会談の際には、習近平主席の日本初訪問の準備をするというところまで関係改善にこぎ着けたとして、中国政府は「安倍元総理は厳しい政治家だが、日中関係の改善に尽力してきた」という評価が定着しています。
(Q.中国でのニュースは、安倍元総理の死を悼む内容になっていますか?)
7月7日は、中国では盧溝橋事件から85年という、対日関係にとって非常に微妙な時期を迎えていて、世論の日本に対する感情は厳しい時期にありました。
安倍元総理は台湾問題で発言もしていて、世論自体はネット空間では厳しい声が多いです。
ただ、私は先週、中国の政府関係者10人くらいと意見交換をしましたが、その時も「安倍元総理の3回目の出馬はあるのか」など、岸田政権の話をしつつも、安倍元総理の話が出てくるくらい、政府内部では安倍元総理への関心は非常に高いものがありました。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
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