8日、安倍元首相が、奈良市内で参議院選挙の応援演説中に銃撃されました。いったい何が起きたのか、安倍元首相のこれまでについて、詳しく解説します。
■安倍元首相が応援演説中に銃撃される…
警察関係者によると、銃撃された安倍元首相は病院に搬送されましたが、当時、心肺停止の状態だったということです。
自民党関係者によると、街頭演説の最中に3メートルほど後ろから2発撃たれ、AEDを使いながら搬送されたといいます。総務省消防庁は、右の首に銃で撃たれた傷と出血、左胸に皮下出血が見られると発表しました。
自民党関係者は「胸を撃たれたらしい」と話していて、現場にいた看護師や駆けつけた救急隊員によって、処置が行われたということです。
奈良市消防本部によると、ドクターヘリで奈良・橿原市にある病院に搬送されたということです。安倍元首相が担架に横たわっている様子が、写真に収められていました。
銃撃を受ける前、安倍元首相は、奈良市の近鉄・大和西大寺駅北口のロータリーで、参院選の候補者の街頭演説会に参加していました。自民党の参院議員のWEBサイトによると、午前11時10分~40分の予定でした。
奈良市消防本部によると、午前11時30分ごろ、「安倍元首相が撃たれた可能性がある」との通報が30件ほど寄せられたということです。
■元海上自衛隊員の男を逮捕 “手製”の銃で銃撃か
銃撃した男は現行犯逮捕されました。確保された瞬間の映像では、グレーの服を着た男が抱えられながら運ばれる様子が映っていました。
警察は、奈良県在住の山上徹也容疑者(41)を殺人未遂の容疑で現行犯逮捕しました。銃のようなものを所持していたということです。
防衛省関係者によると、山上容疑者は2002年に海上自衛隊に入隊し、2005年に任期を満了した元自衛隊員だということです。捜査関係者によると、これまでのところ、山上容疑者について、事件につながるような思想的背景については確認できていないということです。
また、山上容疑者が使った銃は手製のものとみられていて、警察の調べに対して「殺そうと思って狙った」と供述しているということです。
■「アベノミクス」「安全保障関連法」…安倍元首相のこれまで
改めて、安倍元首相のこれまでを振り返ります。
安倍元首相は、2006年に官房長官から戦後生まれの初の首相に就任しました。翌年の参院選で自民党が惨敗した後、持病の潰瘍性大腸炎による体調悪化を理由に突然辞任し、第一次安倍政権は短命に終わりました。
その後、2012年に自民党総裁に復帰し、衆院選に勝利して2度目の首相の座に返り咲きました。第二次安倍政権は、約7年8か月の長期政権となり、首相としては、連続在職日数が2822日と歴代1位となる安倍一強時代を築きました。
第二次安倍政権の看板政策の1つが、大胆な金融緩和を主軸とする「アベノミクス」でした。2013年の参院選では「経済の好循環が起きている」と訴え、自民党が圧勝を収めました。
その後、強固な政権基盤を背景に、野党から強く批判された「特定秘密保護法」や集団的自衛権の限定的な行使を可能とする「安全保障関連法」を成立させました。
■“長期政権の弊害”も… 国有地を約8億円値引き「森友・加計問題」
そして、次第に「長期政権の弊害」と指摘されるような問題も相次ぐようになりました。その象徴的な出来事が、いわゆる“森友・加計問題”です。
森友問題とは、財務省が国有地を約8億円値引きして森友学園に売却した問題です。建設予定だった小学校の名誉校長を昭恵夫人が務めていたことから、値引きの背景に「『忖度』があったのでは」との疑惑が持ち上がり、野党などが厳しく追及していました。
これに対し安倍首相は「一切関わっていないということは、明確にさせていただきたい。もし関わっていたのであれば、これはもう私は、総理大臣をやめるということですから」と反論し、自らや昭恵夫人の関わりをはっきりと否定していました。
しかしその後、財務省が、公文書から昭恵夫人に関わる記述を削除するなど前代未聞の“公文書改ざん”問題に発展しました。
一方、加計問題をめぐっては、理事長と安倍元首相が友人であることから、獣医学部の設置認可をめぐり「忖度が働いたのでは」との指摘が出ました。森友問題と同様に、安倍一強体制の中で「官僚による忖度が起きているのではないか」と、野党から厳しい追及を受けることになりました。
■「桜を見る会」 “事実と異なる国会答弁”が…
さらに、2018年に4月に開催された「桜を見る会」をめぐっては、東京地検特捜部による捜査が行われました。
桜を見る会の前日に行われた夕食会は「安倍晋三後援会」が主催で、参加者は5000円を支払って参加していましたが、実際は会費の不足分を安倍元首相側が補てんしていました。そのことを政治資金収支報告書に記載していなかったなどとして、刑事告発されました。
その後、安倍元首相の元公設秘書は「略式起訴」されましたが、安倍元首相に関しては嫌疑不十分として不起訴処分となりました。一方で、衆議院調査局によると、この問題で、“事実と異なる国会答弁”があったということです。
安倍元首相(2020年2月)
「参加者が実費を支払っており、安倍晋三後援会としての収支と支出はない。事務所側がですね、これに補てんをしたという事実も、まったくないということでございます」
このような国会答弁が、少なくとも118回はあったということです。
そして、2020年8月、再び、健康不安説が浮上しました。総理大臣として連続在職日数が歴代1位となった後、持病の潰瘍性大腸炎が再び悪化したことなどを理由に突然の辞任を表明するに至りました。
◇
演説中の元首相を背後から銃で襲撃するという、前代未聞の凶行に日本中が震撼しています。犯行動機などはまだわかっていませんが、異なる意見や考え方を力や暴力によってねじ伏せようとしたのであれば、そのような姿勢は決して許されるものではありません。
(2022年7月8日放送「news every.」より)
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