価格が安く安定していて「物価の優等生」と言われるバナナの仕入れ値が上がっています。この状況に対し専門家は「バナナが一般の消費者の手に届きにくくなる可能性がある」と指摘しています。

「バナナ98円、安い。買いたいなって思います。息子の離乳食にバナナを使いたくて」「92歳です。バナナは365日絶対に欠かせません」「最近、オレンジとかだと値上がりして手が届かないんですけど、バナナだと比較的安価なので手に入れられるので」(スーパーの買い物客の声)

 愛知県あま市のスーパー「うおた」。毎週金曜日は特売日で、朝から買い物客で賑わっています。

 価格が安く、栄養価が高いため健康にも良いとされているバナナ。これまでは安定的に供給されてきましたが、現在、バナナの仕入れ値に変化が起きています。

「輸入フルーツ全般が値上がりしている中で、バナナはまだ値段が上がっていない優等生という感じなんですけど、ただもう限界に来ている」(うおた青果担当 林英人さん)

 ここ数年、様々な原因が重なり仕入れ値が上がっているといいます。しかし、こちらの店では、コロナの影響で輸入量が減った3年前に値上げして以来、その後は価格を据え置いて、特売日には1袋105円で売ってます。なぜ値上げをしないのでしょうか。

「バナナが安いと店全体も安いというイメージになり、一番キーになる果物だと思うので、これまでも原価上がっているんですが、皆さんのイメージがあるので、利益は無くなっているけれど小売価格は変わらない」(林英人さん)

輸入価格は4割値上げも「安いというイメージ」で小売価格に転嫁しづらく

 北名古屋市の卸売業者「セントライ青果」。青いバナナを輸入し、追熟と呼ばれる作業で黄色くなったものを市場で販売しています。バナナの輸入価格の値上がりで、卸売りの現場も頭を悩ませています。

「現地の生産価格、商品価格、また輸送価格、原油高からダンボール箱代、中の袋代など、全て値上がりしている状況です」(セントライ青果商事部 水野勝則課長)

 バナナの輸入価格は、半年前は1袋450gあたり98円だったのに対し、現在は138円と4割ほど値上げしています。ただ小売り店への販売価格、つまり卸売価格は2021年の約1割の値上がりに抑えられているそうです。

「すぐに販売価格に転嫁できないので、卸業者と小売店が協力して現在の価格を維持しているのが現状です。皆様のご協力あっての価格となっております」(水野勝則課長)

 しかし、円安や原油高騰などが続くと、卸売り価格をさらに上げざるを得ない状況だといいます。

「この1~2カ月以内には、更なる値上げのお願いをすることになりそうです」(水野勝則課長)

生活苦しいフィリピンの生産者 駐日大使大使が値上げ求める異例の会見

 「物価の優等生」といわれるバナナ。今後、私たち消費者が手にするときの値段が上がる可能性もあります。

 8日、バナナの世界的産地・フィリピンの駐日大使が緊急会見を開き、バナナを値上げするよう訴えました。

「日本でのフィリピン産バナナの小売価格は、この7年間ずっと横ばいでした。フィリピンのバナナ生産者にとって現実的ではなく、またフェアでもありません」(駐日フィリピン大使館 ホセ・カスティリョ・ラウレル5世大使)

 フィリピン政府が異例の会見に踏み切った背景には、フィリピンの農家の苦しい現状があると専門家はいいます。

「実は、20年以上前からフィリピンの生産者は『かなり生活が苦しい』『価格を上げてほしい』とずっと言っていて。現地でも物価が上がったり人件費が上がったり、バナナの買い取り価格も少しずつ変化しているんですが、物価の上昇に追い付いていないので生活が楽にならない」(愛知学院大学経済学部 関根佳恵教授)

円安続くと日本でバナナが手に入らなくなる可能性も

 フィリピンで日本向けのバナナの栽培や輸出についての研究を行った愛知学院大学の関根佳恵教授は、円安が続くと日本でバナナが安く手に入らなくなる可能性も指摘します。

「例えば、私が調査した時も実際あったんですが、日本の企業が現地でバナナを生産者から買う価格よりも2倍くらい高い価格を、中国のバイヤーの方が来て生産者に提示するわけですね。そうすると、もちろん生産者は少しでも高く売りたいのでそちらの方に売ってしまう。そうすると日本にはバナナが来ないということになってしまう。そうなると需要と供給の関係でいいますとバナナの価格が上がるので、一般の消費者がなかなか手の届かないようなものになるかもしれない」(関根佳恵教授)

 バナナが値上げされることについて、買い物客はどう考えているのでしょうか。

「ちょっと複雑ですね。自分的には安い方が嬉しいんですが、困っている方がいるなら、もう少し値段を上げてもいいかなと思います」(買い物客)

「バナナも、病気が世界的にまん延したり、かなり伐採されたりして生産できない産地も広がってきているので、そういう意味でバナナが希少化していくということはありうると思います」(関根佳恵教授)

(6月17日 15:40~放送 メ~テレ『アップ!』より)

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