世界各地で火山が次々と噴火。これらの動きは日本でも、桜島や阿蘇、諏訪之瀬島など次々噴火。活発的な火山活動が各地で起きています。
そんななか、今年3月、富士山噴火の被害を想定したハザードマップが、17年ぶりに改定。これまでの想定をはるかに超える可能性が指摘されています。
■“富士山噴火”の可能性・・・被害予測は拡大
向かったのは、静岡県の「富士山樹空の森」。ここで、火山学の権威、京都大学の鎌田浩毅教授に話を聞きました。
鎌田教授:「(Q.ハザードマップ何が変わった?)平安時代です。864年に貞観噴火という噴火があったんですね。調べてみると、溶岩の量ですね。それは、江戸時代の宝永噴火をしのぐものであったということで、それでNo.1のマグマを出した量からハザードマップを全面的に書き換えようということになったんです」
これまでのハザードマップは、1707年に起きた宝永噴火をもとに作られていました。しかし、864年の貞観噴火の溶岩量が、その倍だったことが分かり、最悪の事態を想定し、改定されたのです。
鎌田教授:「では、そちらにあるジオラマをご覧下さい。噴火口が44カ所から252カ所に増えたんです」
実は、富士山は2000年間、頂上から噴火していません。側面やふもとにできた噴火口から、マグマを噴き出してきたのです。
これまで、その噴火口は44カ所とされてきましたが、最新の研究で、その5倍以上の252カ所からマグマが噴き出す可能性が出てきたのです。
鎌田教授:「(Q.被害は?)最新の想定では、溶岩が神奈川県まで流れ出るんですね。火山灰が出るんですけど、それが東京、首都圏に広くざっと、経済被害は2兆5000億円に及ぶと計算されているんです」
しかし、富士山は本当に噴火するのでしょうか。富士山が見える山梨県河口湖まできました。
鎌田教授:「(Q.ここから見える範囲にも噴火口が?)そうなんですね。富士山の右側見て頂きますと、ちょっと小さい丘があるでしょ。これ全部噴火口なんですね。それで、今見えているのが4つありますよね。ちょうど右から2つ目の長尾山が貞観噴火の火口の1つなんですね。ここから大量の溶岩が流れて、青木ケ原樹海を作ったわけです」
鎌田教授は、最悪の場合、広大な青木ケ原樹海を作った噴火と同等量の溶岩流が街を襲うとしています。
鎌田教授:「江戸時代の宝永噴火は200年間マグマをためて噴火したんですよね。今回は300年マグマをためているから、単純計算すると、江戸時代以上の噴火が起きるかもしれない。(地下は)マグマでパンパン。噴火スタンバイ状態です」
問題は、どこから噴火するか分からないこと。噴火口が広範囲に存在することが分かった今、多くの噴火パターンが想定され、被害も大きく変わるといいます。
■富士山周辺を襲う「空振」「火山弾」「溶岩」
山梨県の富士吉田市は、富士山からわずか10キロほどということで、富士山がはっきりと近くに見えています。
鎌田教授:「(Q.富士山の近くではどんな被害が?)爆発的な噴火が起きますと、まず『空振』と言って衝撃波が起きるんですね。ひどい場合は、ガラスが割れますね。それから火山灰と一緒に『火山弾』という弾丸、つまりマグマの塊が降ってくるんですね」
富士吉田市を襲うのは、中腹から噴火する場合です。マグマは最短2時間で到達。東富士五湖道路を寸断しながら、市の中心地を飲み込んだ後も、流れ続けると予測されています。
鎌田教授:「(Q.前兆から噴火の時間は?)一番最近の例で、痛ましい例は、御嶽山の噴火なんですね。それは地震が起きて11分くらいで噴火が始まったんですよ」
御嶽山では、2014年9月27日午前11時41分に火山性微動を観測。そのわずか11分後の、午前11時52分に噴火。58名の命が奪われました。
恐ろしいのは、火山弾や噴石だけではありません。
鎌田教授:「溶岩って熱いんですよね。1000度とか900度あるので、全部を焼き尽くしながらきちゃうわけです。イメージとしては、自転車なら逃げられるくらい。歩いていたら追い付かれる。これまでは10時間という想定だったんですけど、それが2時間でくるかもしれないと早まっている」
鎌田教授:「(Q.溶岩流はどの辺りまで押し寄せてくる?)これまでの(2004年の)ハザードマップだと、静岡県と山梨県が溶岩流の被害を受ける県とされていたんですけど、今回、もっと遠くまで行きまして、神奈川県が加わったんです」
■“富士山噴火”の被害・・・東京への影響は?
富士山噴火のマグマが神奈川まで。その被害とは?
富士山から約40キロの小田原です。今回発表された新たなハザードマップには、この辺りのエリアも追加されました。酒匂川を伝い、溶岩流が流れてくると予測されています。
ただ、流れてくるものには、もう一つ“厄介なもの”が・・・。
鎌田教授:「それは泥流なんです。富士山の近くに大量の火山灰が積もるでしょ、雨が降ると小田原の酒匂川を通って太平洋まで流れたわけです」
1707年の宝永噴火の際には、火山灰が酒匂川の底にたまり、半年後の台風で下流の平野部が大洪水に襲われました。
鎌田教授:「復旧しても、毎年流されちゃって、田畑もね。それで小田原藩はついに領地を幕府に返上したんですよ。それが戻ってくるのが、50年から70年後でね。その間、常に泥流が流れ続けたんですね」
当時のようなことが今起これば、上下水道が機能しなくなるのは必然です。
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